T.遼寧省の主な動向(2006年3月)

1.張文岳・遼寧省長が阿部孝哉・在瀋陽日本国総領事と会見(29日)

(会見内容)張文岳省長は阿部総領事に瀋陽への赴任に対し歓迎の意を表すとともに、遼寧省の経済社会発展の状況につき説明を行い次のとおり述べた。近年、旧工業基地振興政策実施のプロセスの中で、省全体の経済及び社会の発展は新たな成果を上げ、改革開放の歩みは一段と加速した。日本は隣国であり遼寧省の重要な貿易及び経済協力のパートナーであり、双方の経済的補完性は非常に強い。我々は新たな歴史時期において全面的に日本との経済協力を強化、特に先進的な設備製造業、ハイテク産業、農産品及び消費品加工業、流通業、金融保険業、観光業及びその他の現代的なサービス業の領域において相互協力を強化することを希望している。同時に双方の科学技術、教育、文化、衛生などの領域における友好的な協力を推進する。日本の企業界が遼寧省を訪れ投資を行うことを歓迎しており、大企業だけでなく中小企業も歓迎している。遼寧省政府は今までと変わらず在瀋陽日本国総領事館業務をサポートする。総領事が瀋陽在任中、一切が順調であることを願っている。

阿部総領事は次のとおり述べた。瀋陽に赴任してから、瀋陽の関係部門から暖かい歓迎を受け、非常に感動している。遼寧省は東北アジア経済圏の中で重要な地位にあり、経済発展の潜在力は非常に大きい。私は以前から遼寧省に強い関心を持っており、遼寧省と日本の経済、文化等の各方面での交流を促進し、相互理解を深め、双方の友好協力関係のさらなる発展を推進することを願っている。

 

2.新対外開放戦略「五点一線」キャンペーンを展開

20日付遼寧日報は一面トップで「『五点一線』建設は遼寧の開放の新枠組み」の記事を掲載し、遼寧省の対外開放新戦略である沿海経済ベルト地帯開発構想を特集した。「五点」は大連・長興島臨港工業区、遼寧(営口)沿海産業基地、遼西錦州湾沿海経済区、遼寧丹東産業園区、大連・庄河花園口工業園区を指し、「一線」はこれらの沿海経済開発区を結ぶ海浜道路(1,443キロメートル)を建設すること。東北振興政策や遼寧省の対外開放戦略を加速するプロジェクトとして、遼寧省が全力をあげて取り組んでいる。遼寧日報では連日、「五点一線」の特集記事や政策解説記事を掲載し、キャンペーン報道を展開している。(3/20〜31遼寧日報)

 

3.国家開発銀行が遼寧省の「五点一線」開発に300400億元を融資

 国家開発銀行は遼寧省が取り組む対外開放新戦略「五点一線」の現地を視察し、300400億元規模の政策性融資を行う方針を固めた。さらに、技術援助資金2億元を提供するという。開発銀行の支援対象となるのは、「五点」の大連長興島臨港工業区、遼寧(営口)沿海産業基地、遼西錦州湾沿海経済区、遼寧丹東産業園区、大連花園口工業園区の5つの開発区。(3/6遼寧日報)

 

4.建設銀行が遼寧省に1,000億元を融資

 23日、中国建設銀行と遼寧省政府は第十一次五ヵ年計画期間中に、建設銀行が遼寧省に1,000億元の融資枠を提供することを柱とする包括提携を結んだ。融資は主に、交通、エネルギー、設備製造、社会事業などへの投資や重点企業の技術改造にあてられる。報道によると、双方は政府、銀行、企業の相互利益を目標に、長期的かつ安定した提携関係を構築するという。調印式では、遼寧省交通庁、本渓鋼鉄集団、営口港務集団、渤海船舶重工、綏中発電、遼寧電視台の各社もそれぞれ建設銀行遼寧支店と提携関係を結んだ。(3/25遼寧日報)

 

5.東北地区振興計画成編成第一回会議を開催

 国務院東北振興弁公室と国家発展改革委員会は2月28日、東北振興の総合計画である「東北地区振興計画」策定のための第一回会議を開催した。中央政府の各部署、東北3省や内蒙古自治区の代表、国家開発銀行の幹部などが出席した。計画を策定する専門グループを立ち上げ、東北地域の経済一体化に向けた具体的な指針作りに着手する。

東北振興弁公室の張国宝主任は、「東北振興を推進する上で、地域ごとの経済が閉鎖的だったり、産業の重複や環境保護における協調性が不足しているなどの問題が目立つ」と指摘した。大型インフラ建設や重点産業発展には、各省や区の間の話し合いだけでなく、総合計画の策定が必要であるとの見解を示した。

具体的には、第十一次五カ年計画期間における目標と戦略重点、交通・エネルギー・水利事業の発展目標と方向性、重点産業の発展指針と目標、周辺国との経済関係や東北アジア連携に関わる具体策などを盛り込む。(3/1振興東北網)

 

6.朝日新聞社が瀋陽支局を開設、外国報道機関として初

 15日、中国外交部の批准を経て、日本の朝日新聞社は瀋陽支局を開設した。同社は外国報道機関として初めて瀋陽に支局を開設したことになる。朝日新聞社では、瀋陽支局開設を機に、中国東北地区の報道をより充実させていきたいと計画している。(3/16遼寧日報)


U.遼寧省日誌(政治・経済)

1.日本関連

12日 近藤政道・北海道銀行代表取締役、副頭取ら一行が瀋北新区内の華美畜禽、蒙牛乳業、誠信食品及び環北開発区の新北浅等の企業を視察。

 

2.省政策の動き

(T.遼寧省の主な動向2.「新対外開放戦略「五点一線」キャンペーンを展開」参照)

 

3.中央・地方との往来

(特になし)

 

4.対外関係、企業関係者等との会見

4日 陳政高・瀋陽市党委書記及び李英傑・瀋陽市長は北京にて、ブリジストン常務取締役の小田切宏通氏(ブリジストン(中国)投資有限公司会長兼社長)と会見。

6日 李英傑・瀋陽市長は北京にてグェルー(Guelluy)・フランス大使を表敬訪問。

7日 李英傑・瀋陽市長は北京にてベルナルド(Bernard)・ベルギー大使を表敬訪問。

8日 李英傑・瀋陽市長は北京にて・エールマン(Ehrman)・イギリス大使を表敬訪問。

9日 陳政高・瀋陽市党委書記、李英傑・瀋陽市長は北京にて金夏中・韓国大使を表敬訪問。

9日 李英傑・瀋陽市長は北京にて阿南大使を表敬訪問。

9日 李英傑・瀋陽市長は北京にてシュタンツェル(Stanzel)・ドイツ大使を表敬訪問。

10日 李克強・省党委書記は北京にて麦紹棠・香港中建科技集団代表取締局主席と会見。

10日 張文岳・省長は北京にてウェリッチ(Welitsch)・クロアチア大使と会見。

22日 李克強・省党委書記はローランド(Roland)・カナダ大使と会見。

24日 李万才・副省長はクイン(Quinn)・豪グローバルテクノロジー取締役一行と会見。

27日 李克強・省党委は孫鶴圭・韓国京畿道知事一行と会見。

30日 張文岳・省長は当館阿部総領事と会見。

5.省内各会議・イベント、その他

10日 温家宝総理が遼寧代表団のもとを訪れ、第十期全人代第四次会議遼寧代表団審議に出席。

15日 張文岳・省長は省政府業務会議を主宰し、今年の省全体のマクロ経済情勢につき分析を行い、全面的な経済業務の割り振りを行った。

16日 省党委は常務委員拡大会議を開催し、全国両会の考え方を伝達し、遼寧省の目前の重点的業務の割り振りを行った。李克強・省党委書記が当会議を主宰。

16日 張文岳・省長は省政府特定テーマ会議を主宰。2005年の固定資産投資の状況につき総括を行い、今年の重点プロジェクト業務の割り振りにつき討議を行った。

17日 省党委は常務会議を開催し県域経済活性化の問題につき検討。会議は李克強・省党委書記が主宰。

19日 李英傑・瀋陽市長を団長とする市政府代表団は韓国、日本、シンガポール、香港を13日にわたり訪問。

20日 張文岳・省長は高等院校改革発展座談会を主宰。教育改革の深化、学校運営の質の向上、遼寧振興に対する協力を強調。

20日 省政協は機関幹部大会を開催。全国政協第十期第四次会議の考え方を伝達。

20日〜21日 中央紀律委員会、中央組織部巡回組は遼寧省の巡回業務を行った。巡回組は遼寧省の指導者たちと面会を行い、閻海旺・巡回組長が重要講話を行った。李克強・省党委書記が指導者を代表し講話と業務報告を行った。

21日 張文岳・省長は省政府常務会議を主催。経済発展の良好な趨勢を継続し、経済の健全かつ急速な発展を確保するよう強調した。

22日 李万才・副省長は李龍南・朝鮮貿易省副相を団長とする朝鮮経済貿易代表団一行と会見。また、代表団は訪問期間中、中朝国境市民の貿易問題につき座談会を開いた。

22日 李英傑・瀋陽市長を団長とする瀋陽市政府代表団は札幌に到着し、視察を開始した。23日には、東京にて経済工商界ハイレベル懇談会を開催した。

23日 全省社会主義新農村建設工作推進会議が開催。李克強・省党委書記が重要講話。その中で県域経済の大いなる発展を重要な牽引役とし、社会主義新農村の建設を全面的に推進することを強調した。

27日 張文岳・省長は科研院所工作座談会を主宰。

28日 張文岳・省長は省政府業務会議を主宰し、「五点一線」に関連した開放開発業務の割り当てにつき検討を行った。会議では科学計画、プロジェクトの正確な選定、指導強化を行い、全力で「五点一線」対外開放業務を推進することを強調した。

30日 遼寧省党委は常務委員会議を開催。労働安全生産業務に関する重要講話の考え方をしっかりと学び、安全生産業務の割り振りにつき検討した。李克強・省党委書記が会議を主宰し、重要講話を行った。

 

6.分野別報道

(1)対外経済 

・遼寧省の「走出去」(海外進出)戦略、カンボジアなどで産業団地建設

遼寧省対外貿易経済合作庁の張貴新庁長はこのほど、遼寧省企業がカンボジア、カザフスタン、ロシアの3カ国で産業団地の建設を進めていることを明らかにした。これは同省地場企業の「走出去」(海外進出)戦略の一環。カンボジアでは紡織を中心とした工業団地を、カザフスタンでは石油工業団地を、ロシアでは農業・養殖・農産物加工が集まる産業団地を開発する計画。(3/8新華網)

 

・対外開放促進のため、保税区や開発区を増設

遼寧省は対外開放促進や経済構造調整推進の取り組みの一環として、今後、保税区を含む開発区の建設に力を入れる。具体的には、大連保税区の面積拡大、営口と錦州に保税物流園区を設置、瀋陽に保税区機能を持つ内陸港を建設する。遼寧省には現在、国家級の経済技術開発区が5カ所、省級の経済技術開発区が25カ所設立されている。第十次五カ年計画期間中、これらの開発区の外資導入額は、実行ベースで759,000万米ドルに上り、外資受け入れの主要窓口となった。(3/10新華網)

 

・遼寧省商業ミッションが北朝鮮訪問

北朝鮮との関係強化を目的とした遼寧省の商業ミッション(団長:趙穎奇・遼寧省商業庁庁長)が31118日、北朝鮮を訪問した。

遼寧省側は北朝鮮に対し、5月の平壌国際博覧会での同省企業代表団と北朝鮮企業との交流拡大、大型小売店による北朝鮮での商業企業設立、工業企業による北朝鮮での工場開設、飲食企業による北朝鮮でのレストラン開設などを提案した。また、来年も平壌で遼寧商品の見本市を開催すること、遼寧省で行われる見本市に北朝鮮企業が積極的に参加することなどを求めた。

北朝鮮側は、遼寧企業の投資を歓迎する意向を表明。特に提携を望む分野として、平壌郊外での商品卸売市場の建設、新義州での保税加工区建設と工場設立、展覧館とその付属ホテルやレストランの建設、電器スイッチ、蓄電池、ベアリング、旨味調味料、エレベーター、トラクターの工場開設をあげた。(3/28NNA

 

・瀋陽市代表団、韓国、日本、シンガポール、香港で投資誘致活動

瀋陽市政府は19日から13日間にわたり、李英傑市長を団長とする投資誘致ミッションを韓国、日本、シンガポール、香港に派遣した。韓国では16件の重大プロジェクトに契約。日本では瀋陽市長と日本経済工商界トップとの懇談会を開催した。また、日中経済協会と日中東北開発協会の瀋陽事務所開設、日本の法律事務所の瀋陽事務所開設の調印式も実施した。さらに瀋陽化学工業園区投資プロジェクト、北方交通との特殊車両生産プロジェクト、都市軌道交通開発プロジェクト、鞍鋼と提携して瀋陽に鋼材物流センターを建設するプロジェクトについて説明した。シンガポールでは26の重点プロジェクトについて商談を行い、15件について契約を交わした。(3/20、23、27、30瀋陽日報)

 

(2)産業

・スタバが瀋陽進出、遅れていた東北出店を拡大

 13日、カフェチェーン大手の米・スターバックスが、瀋陽スターバックスの開業式典を行った。同日、先行して試営業していた南京北街店に次ぎ、太原街店をオープンした。スターバックスは昨年、大連に相次いで3店舗を開店し、遅れていた東北市場への参入を本格化した。(3/14中国新聞社電

 

・西武百貨店、年内に瀋陽出店計画

 西武百貨店が今年、瀋陽に出店する計画だという。香港と中国本土でのライセンスを持つ高級ブランド品販売企業、香港ディクソン・コンセプツが運営する。ディクソンは瀋陽店に5,000万〜6,000万元を投資する計画だという。(3/16瀋陽今報)

 

(3)国有企業

・国有企業改革で進展

 2005年5月に全省企業改革作業会議が開催されてから、遼寧省では様々なルートや様々な手法により国有企業改革が進展した。2005年末までで、全省の地方管轄国有大型企業40社のうち、全体の63%にあたる25社が出資多元化を実現。国有中小工業企業の81%にあたる488社が体制改革を完了した。商業・貿易・流通・交通・建設分野の非工業国有企業では49%にあたる951社が体制改革を完了した。(3/23遼寧日報)

 

(4)農業・農村・農民

(特になし)

 

(5)労働・社会保障

・大連の失業者向け融資、25%が貸し倒れ

大連市の「小額担保貸付」の実績は全国トップクラスであるが、一方でその4分の1の返済が滞っていることが分かった。「小額担保貸付」は失業者やレイオフ者に対する独立支援政策の一環として、信用保証機関の保証を経て、2万元程度の起業資金を提供する制度。大連市では2005年末までに44,000万元の小額担保融資を提供し、融資額では上海を上回る全国一となった。うち、大連市商業銀行の取扱額は18,518万元で、同業務の実績としては全国の銀行の中でも最大になっている。(3/29新商報)

 

(6)環境

・昨年の自然災害による経済損失は100億元

 遼寧省気象局によると、同省の2005年の自然災害による経済損失が100億元にのぼるという。これはGDP1.25%が失われた計算になる。昨年は例年に比べて自然災害が多く、人的被害でも死者69人、行方不明者55人を出した。被災農地は719,000ヘクタールにのぼった。特に夏場の洪水の被害が深刻だった。(3/27新華網)

 

(7)その他

・瀋陽オリンピック体育センターが着工

1日、瀋陽市で総合スポーツセンター「瀋陽オリンピック体育センター」が着工した。2008年北京五輪のサッカー会場の一つとして使用される予定で、同年5月の完成を目指す。同センターは渾南新区に位置し、敷地面積43万平方メートル、総建築面積26万平方メートル。6万人収容のメインスタジアム、1万人収容の総合体育館、4,000人収容の競泳プール、4,000人収容の屋内テニスコートを併設する。総投資額は197,000万元。(3/2遼寧日報)

 

 

・遼寧省への「草の根無償援助」、4件20万ドル

瀋陽市でこのほど、日本国政府による遼寧省への無償資金援助プロジェクト「草の根無償援助」4案件、20万ドル相当を提供するための調印式が行われた。遼寧省に対する日本の無償資金援助は1991年より実施されている。(3/9華商晨