総領事レター(令和4年3月)

令和4年3月21日
拝啓 春分の候、益々御清栄のこととお慶び申し上げます。平素は格別の御高配を賜り、在瀋陽日本国総領事館を代表して、厚く御礼申し上げます。
 
 日本では、桜の開花シーズンをまもなく迎えます。例年であれば中国からも多くの観光客をお迎えしておりましたが、今年も引き続きコロナ禍の影響で、国を跨いだ人々の往来が制限されていることを惜しく感じております。東北三省においても、コロナ蔓延のリスクと隣り合わせにある中、第一線で感染予防対策に尽力されている地方政府、医療従事者をはじめとした関係者各位に、改めて敬意を表したいと思います。
 
 日本政府は、今月1日から観光を除く外国人の新規入国を再開しました。ビジネス目的などの短期滞在者に加え、留学や技能実習などの長期滞在資格を有する者は、ビザが発給されれば入国できるようになりました。岸田総理は今月3日の記者会見で、「我が国の宝とも言える留学生が、国民の安心を保ちつつ入国できるよう、『留学生円滑入国スキーム』を設け、優先的に入国できるよう支援」する旨述べ、国際的な人の往来を増やしていく意思を表明しました。日本入国後の待機期間も緩和され、自宅などでの待機期間が最大7日間に短縮されました。日中国交正常化50周年という記念すべき年である本年、これらを契機に、中国からの留学生やビジネス訪問が増え、経済交流や国民交流が進むことを期待しています。
 
 こうした「経済・国民交流」の発展は、日中両国が目指す方向性とも合致します。昨年10月の日中首脳電話会談では、岸田総理と習主席は、両国間の経済・国民交流を後押ししていくことで一致し、11月の日中外相電話会談でもこれが確認されました。これら指導者間の共通認識に従って、経済・国民交流を良い足がかりとして、東北三省と日本との交流をより一層推進できればと考えております。東北三省にはこうした交流を図るための様々なプラットフォームもあり、皆様とも連携を図っていきたいと考えています。
 
 既に日中国交正常化50周年は、幸先の良いスタートを切れていると感じています。
 東京オリパラ及び北京冬季オリパラでは、両国選手の活躍ぶりから、多くの感動と物語が生まれ、スポーツや若者の交流への関心が高まりました。この勢いを絶やさず、文化、観光、青少年、スポーツ等様々な分野で、東北三省と日本との交流をより進めていきたいと考えています。
 2月23日には、当館主催の天皇誕生日祝賀レセプションを成功裏に開催し、のべ200名近くの御来客の皆様と共に天皇陛下のお誕生日をお祝いすることができました。
 当館主催の初めての国交正常化50周年記念文化行事として、3月4日、長春にて「日本花道芸術交流会」が開催され、学生たちが日本の伝統文化であるいけばなを体験しました。
 
 最近では、単義・瀋陽市副市長、趙顕・長春市副市長をはじめ、東北三省の省市外弁主任等とそれぞれ懇談し、今年の日中国交正常化50周年を契機に、各地域と日本との経済や人的・文化交流を更に発展、拡大させていくことで一致しました。
 私は先日、日中国交正常化の歩みを振り返るべく、国交正常化交渉の記録に関する書籍を読み返しましたが、当時の田中角栄総理大臣及び大平正芳外務大臣と周恩来総理及び姫鵬飛外交部長らによる日中友好に対する並々ならぬ意志とその指導力に感服し、日中国交の基礎を築き上げた歴史の重みを改めて感じているところです。この国交正常化に至る前には日中友好の志をもって取り組む多くの人々もおり、遼寧省と友好省県関係にある富山県出身政治家の故松村謙三氏もその一人でした。同氏は正常化前の59年にも訪中し、周恩来総理と会見しています。富山県は同氏の功績を称え、将来日中の架け橋となる日本語を学ぶ遼寧省の学生に奨学金を交付する「松村謙三記念富山県・遼寧省友好奨学金」1994年以来続け、日中間の若者の交流に貢献してきています。「五十にして天命を知る」ともあるように、これまでの両国の平坦ならぬ道における先人の努力に敬意を表し、歴史を温め直し(重温歴史)、皆様と共に未来志向の日中関係を発展させるべく力を尽くしたいと思います。
 そして、来年には日中平和友好条約締結45周年が続きます。コロナ禍による制約が続いていようとも、北京オリンピックで最高難度前人未踏の技に果敢に挑戦した日本人フィギアスケーターの如くチャレンジ精神を持って、「こういう時だからこそ、できる時にできることをできる範囲で先送りせず着実に実施していく」ことが非常に大事だと考えています。越えられない冬は決してないのと同様、コロナ後を見据えて、今、日中協力の様々な分野の土壌を耕し、種をまき、コロナ後に立派に花開くよう準備していくことが重要です。
 
 改めて東北三省に、滞在する在留邦人約4,500人、日系企業約2,100社の安全、安心のための御支援に、東北三省の地方政府をはじめ、関係者の皆様に感謝申し上げ、更なる御支持をお願いするとともに、東北三省と日本との関係強化に皆様からも御協力のほどお願いできればと思います。まだお会いしていない皆様にも今後直接お目にかかり意見交換させていただくことを楽しみにしています。皆様の御健勝とご多幸をお祈り申し上げます。
敬具
 

(写真は日本で放映中のテレビドラマ「鎌倉殿の13人」で今一番ホットな町=鎌倉を桜の季節に訪れた際の一コマです。「鎌倉時代」(12-14世紀)には幕府が置かれ、日本の政治において最も重要な位置を占めた町で京都のように多くの神社仏閣であることで知られ、遼寧省と友好県省にある神奈川県にあり、東京にも近く多くの観光客が訪れます。)


 
                                                                  在瀋陽日本国総領事