総領事レター(令和4年8月)
令和4年8月22日
拝啓 立秋の候、皆様におかれましては益々御清祥のことと思います。
日中国交正常化50周年にあたる2022年も後半に入っています。中国東北地方におけるコロナの感染状況もここ暫くは小康状態が続く中、在留邦人を含めた市民の多くが日常生活を取り戻し、日系企業の操業状況も改善に向かっております。防疫対策に関わる各方面の皆様をはじめ、在留邦人及び日系企業への日頃からの御支援に対し、心より厚く御礼申し上げます。
私は先日、日中国交正常化の際の首相周恩来さんが通った小学校の記念館(周恩来少年读书旧址纪念馆)に行って参りました。周首相の外交における功績を展示した部屋には国交正常化のための共同声明署名を写した写真が大きく飾られていて外交的な歴史の重みを感じたところです。
1972年9月25日、当時の田中角栄総理は、中国の周恩来首相と北京で共同声明に署名し、「恒久的な平和友好関係を確立する」ことで一致しました。
昨年10月、岸田文雄総理と習近平国家主席の電話会談では、岸田総理が「建設的かつ安定的な関係」を共に構築していかなければならないと述べ、習主席からは賛意が示され、「日中は隣国であり、『仁に親しみ鄰に善くするは、国の宝なり』」(中文:中日是近邻,“亲仁善邻,国之宝也”)と述べ、両者は、日中国交正常化50周年を契機に、両国間の経済・国民交流を後押ししていくことで一致しました。今年5月の日中外相テレビ会談でもこの重要な共通認識を双方の努力で実現していくことを確認しています。
同日中共同声明の前文には、「日中両国間には社会制度の相違があるにもかかわらず、両国は、平和友好関係を樹立すべき」、「相互に善隣友好関係を発展させることは、両国国民の利益に合致する」などと書かれています。これは50年を経た今も色褪せない重みをもっています。周首相も「中日两国尽管社会制度不同,完全可以友好相处。只要本着互相谅解的精神,求大同,存小异,两国之间的种种问题是能够解决的。」と述べています。日中両国には立場を異にする課題もあり、時に困難にも直面しますが、そういうときこそ、初心を忘れず、日中友好の意義を見つめ直し、一衣帯水の隣国として、「和為貴」の精神を基礎に、長期的・マクロ的な視点に立ち、我々が率先して対話を重ね、適切な形で協力を進め、よりよい日中の未来を切り拓く行動をとらなければならないと考えています。
当総領事館では、こうした認識の下、関係各方面と協力しながら、日中友好と相互理解の促進に資する様々な取組を行ってきました。
5月には、遼寧省・瀋陽市両外事弁公室、瀋陽日本人会と共催で「第●回瀋陽日本語弁論大会」をオンラインで開催し、予選を通過した各大学代表の21名が個性あふれる熱弁を振るいました。また同月、遼寧省外事弁公室主催の「松村謙三記念富山県・遼寧省友好奨学金」の交付式がオンラインで開催され、私も参加しました。この奨学金は、1994年に創設され、日中国交正常化にも大きな貢献をした松村謙三氏の名を冠し富山県が遼寧省内で日本語を学ぶ大学生及び高校生に対し交付するもので、28年の歴史を有します。
6月には日中国交正常化50周年記念「瀋陽ジャパンフェスティバル」が開催されました。日本の各地方自治体や日系企業などが出展し、2日間でのべ6千人が訪れ、美食や武道、音楽などを通じて「日本」を堪能し、大変な盛況ぶりでした。
また、6月下旬には、瀋陽市図書館にて、中国人民対外友好協会・日本中国文化交流協会主催の「写真家岡本央が撮った子供たち」写真展が開催され、岡本氏がこれまで30年あまりにわたって撮影した日本と中国の子供たちの作品が展示されました。私も本写真展を視察し、「少年児童は日中友好の未来をつくる重要な力」との岡本氏の思いに共感を寄せたところです。
経済・貿易の面でも、コロナ禍においても、両国間の交流は続けられています。
6月下旬には、ハルビン市を訪問し、黒竜江省及びハルビン市関係者との間で今後の交流拡大について話し合いました。先月、瀋陽万科中日産業園の4回目の訪問では、関係者と交流し、進捗状況を視察しました。また、今月下旬には長春で毎年恒例の日中経済協力会議が開催され、設備製造、新エネルギー、環境、現代農業、ヘルスケアなど各分野の企業マッチング商談会が開催される予定です。国交正常化50周年の年に20回目の会議を迎え、その成功と大きな成果を祈念するとともに、コロナ禍等様々な困難に共に打ち勝ち日本と東北三省の経済交流・協力が益々活性化し、東北経済の前進に寄与することを期待しています。
当総領事館は、9月21日、瀋陽市内において「日中国交正常化50周年記念レセプション」を開催する予定です。日本と中国東北地方の交流の歩み等を振り返る写真展を行うほか、地方間交流の更なる促進に向けて、東北三省と友好関係にある日本の地方自治体を招いて日本各地の魅力を紹介してもらう予定です。その際にでもまた皆様と直接お目にかかれることを楽しみにしております。
最後に、日中関係の発展に貢献した安倍元総理の御逝去につき、申し上げます。7月8日、安倍元総理は、選挙活動中、凶弾に倒れ、逝去されました。安倍元総理は、日本の憲政史上、最も長い在任期間を務めた内閣総理大臣で、在任期間中、揺るぎない信念とリーダーシップを発揮し、国内外の諸課題に尽力されました。対外政策においては、地球儀を俯瞰する外交を展開し、在任期間中に中国を5回訪問され、両国関係の改善と発展に多大な貢献をされました。ここに改めて追悼の意を表するとともに、先日の当総領事館における弔問記帳においてお言葉を頂いた多くの方々に対しまして、衷心より御礼申し上げます。
末筆ながら、改めて、在留邦人と日系企業に対する御支援に感謝するとともに、引き続きの御支援のほどよろしくお願い申し上げます。
日中国交正常化50周年にあたる2022年も後半に入っています。中国東北地方におけるコロナの感染状況もここ暫くは小康状態が続く中、在留邦人を含めた市民の多くが日常生活を取り戻し、日系企業の操業状況も改善に向かっております。防疫対策に関わる各方面の皆様をはじめ、在留邦人及び日系企業への日頃からの御支援に対し、心より厚く御礼申し上げます。
私は先日、日中国交正常化の際の首相周恩来さんが通った小学校の記念館(周恩来少年读书旧址纪念馆)に行って参りました。周首相の外交における功績を展示した部屋には国交正常化のための共同声明署名を写した写真が大きく飾られていて外交的な歴史の重みを感じたところです。
1972年9月25日、当時の田中角栄総理は、中国の周恩来首相と北京で共同声明に署名し、「恒久的な平和友好関係を確立する」ことで一致しました。
昨年10月、岸田文雄総理と習近平国家主席の電話会談では、岸田総理が「建設的かつ安定的な関係」を共に構築していかなければならないと述べ、習主席からは賛意が示され、「日中は隣国であり、『仁に親しみ鄰に善くするは、国の宝なり』」(中文:中日是近邻,“亲仁善邻,国之宝也”)と述べ、両者は、日中国交正常化50周年を契機に、両国間の経済・国民交流を後押ししていくことで一致しました。今年5月の日中外相テレビ会談でもこの重要な共通認識を双方の努力で実現していくことを確認しています。
同日中共同声明の前文には、「日中両国間には社会制度の相違があるにもかかわらず、両国は、平和友好関係を樹立すべき」、「相互に善隣友好関係を発展させることは、両国国民の利益に合致する」などと書かれています。これは50年を経た今も色褪せない重みをもっています。周首相も「中日两国尽管社会制度不同,完全可以友好相处。只要本着互相谅解的精神,求大同,存小异,两国之间的种种问题是能够解决的。」と述べています。日中両国には立場を異にする課題もあり、時に困難にも直面しますが、そういうときこそ、初心を忘れず、日中友好の意義を見つめ直し、一衣帯水の隣国として、「和為貴」の精神を基礎に、長期的・マクロ的な視点に立ち、我々が率先して対話を重ね、適切な形で協力を進め、よりよい日中の未来を切り拓く行動をとらなければならないと考えています。
当総領事館では、こうした認識の下、関係各方面と協力しながら、日中友好と相互理解の促進に資する様々な取組を行ってきました。
5月には、遼寧省・瀋陽市両外事弁公室、瀋陽日本人会と共催で「第●回瀋陽日本語弁論大会」をオンラインで開催し、予選を通過した各大学代表の21名が個性あふれる熱弁を振るいました。また同月、遼寧省外事弁公室主催の「松村謙三記念富山県・遼寧省友好奨学金」の交付式がオンラインで開催され、私も参加しました。この奨学金は、1994年に創設され、日中国交正常化にも大きな貢献をした松村謙三氏の名を冠し富山県が遼寧省内で日本語を学ぶ大学生及び高校生に対し交付するもので、28年の歴史を有します。
6月には日中国交正常化50周年記念「瀋陽ジャパンフェスティバル」が開催されました。日本の各地方自治体や日系企業などが出展し、2日間でのべ6千人が訪れ、美食や武道、音楽などを通じて「日本」を堪能し、大変な盛況ぶりでした。
また、6月下旬には、瀋陽市図書館にて、中国人民対外友好協会・日本中国文化交流協会主催の「写真家岡本央が撮った子供たち」写真展が開催され、岡本氏がこれまで30年あまりにわたって撮影した日本と中国の子供たちの作品が展示されました。私も本写真展を視察し、「少年児童は日中友好の未来をつくる重要な力」との岡本氏の思いに共感を寄せたところです。
経済・貿易の面でも、コロナ禍においても、両国間の交流は続けられています。
6月下旬には、ハルビン市を訪問し、黒竜江省及びハルビン市関係者との間で今後の交流拡大について話し合いました。先月、瀋陽万科中日産業園の4回目の訪問では、関係者と交流し、進捗状況を視察しました。また、今月下旬には長春で毎年恒例の日中経済協力会議が開催され、設備製造、新エネルギー、環境、現代農業、ヘルスケアなど各分野の企業マッチング商談会が開催される予定です。国交正常化50周年の年に20回目の会議を迎え、その成功と大きな成果を祈念するとともに、コロナ禍等様々な困難に共に打ち勝ち日本と東北三省の経済交流・協力が益々活性化し、東北経済の前進に寄与することを期待しています。
当総領事館は、9月21日、瀋陽市内において「日中国交正常化50周年記念レセプション」を開催する予定です。日本と中国東北地方の交流の歩み等を振り返る写真展を行うほか、地方間交流の更なる促進に向けて、東北三省と友好関係にある日本の地方自治体を招いて日本各地の魅力を紹介してもらう予定です。その際にでもまた皆様と直接お目にかかれることを楽しみにしております。
最後に、日中関係の発展に貢献した安倍元総理の御逝去につき、申し上げます。7月8日、安倍元総理は、選挙活動中、凶弾に倒れ、逝去されました。安倍元総理は、日本の憲政史上、最も長い在任期間を務めた内閣総理大臣で、在任期間中、揺るぎない信念とリーダーシップを発揮し、国内外の諸課題に尽力されました。対外政策においては、地球儀を俯瞰する外交を展開し、在任期間中に中国を5回訪問され、両国関係の改善と発展に多大な貢献をされました。ここに改めて追悼の意を表するとともに、先日の当総領事館における弔問記帳においてお言葉を頂いた多くの方々に対しまして、衷心より御礼申し上げます。
末筆ながら、改めて、在留邦人と日系企業に対する御支援に感謝するとともに、引き続きの御支援のほどよろしくお願い申し上げます。
在瀋陽日本国総領事